~TREの知識を深める①~
TREはエクササイズによって体から自然に湧き出てくる「振動・震え」を用いて、ストレスやトラウマを解放していくことが特徴です。まずはTREの振動・震えの前に、一般的な体の震えと動物の体の震えを考察していきたと思います。
体の震えについて
みなさんもご体験があると思いますが、人間の体は意図しない場面でひとりでに震えることがあります。一般的な体の震えとはどのようなものでしょうか。
体が震えるのはこんなとき
- 寒い
- 緊張、怖い、驚き
- 病気に関連したもの
(パーキンソン病、甲状腺機能亢進症、アルコール中毒、パニック症、不安障害、心的外傷後ストレス障害など )
震えは生命維持のシステムのひとつ
病気に関連した震え以外は、体の自己調整のための震えです。寒いときに出る震えは、熱を生み出し体を温めるためのものですし、緊張したときや怖いときに出てくる震えは、交感神経系が優位になり過剰に分泌されたホルモン物質やエネルギーを放出させ、平常時の状態に戻るために出るといわれています。
このような自己調整としての震えは自律神経系(脳神経系)の働きによるものとされ、私たちの意図とは関係なく働いている心臓や呼吸、体温調整といった生命維持機能のうちのひとつです。

人間と動物の違い
人間の場合…

震えは生命維持の機能とはいえ、人が震えているところを目にする機会はそう多くないと思います。また、ご病気の場合を除いてご自身の体が震えることも滅多にないと思います。
人があまり震えない理由として…
・震えるような場面に出くわすことが少ない
・一般的に理性と呼ばれる脳の部分が発達しているので、震えを無意識のうちに抑え込んでしまう
・急激な強いストレスがかかることで神経系が凍りつき、震えが自然に起きないままになってしまう
2つ目の理性の部分で言うと、震えるという動作は社会的に「恥ずかしいこと」や「弱さの表れ」として、人前では隠した方がいいと認識されていることも、震えを抑え込んでしまう要因のひとつといえます。
私自身も、緊張したときに声が震えてしまった経験や自転車と自動車のごく軽い接触事故を体験したときに手が震える体験をしたことがあります。この事故のときは、運転手さんとのやりとりをしなければならない状況で手を震えるのを無意識に止めていました。
体は自然に震えて緊張状態をリリースしようとしているにも関わらず、それを抑えてしまうことは社会で生きていると多くあるのではないかと思います。
一方で動物は…

動物は本能のままに体を使っているので、ストレスがかかったときに自然と体を震わせることが多いようです。インコを飼っていらっしゃるクライアントさんから聞いた話では、お部屋の中でケージの外に放していたインコを捕獲してケージの中に入れると、必ずその後に体をプルプルっと震わせるそうです。捕獲されたときのストレス状態を解放するため震えとして放出しているんですね。
また、震えは生きるか・死ぬかの場面から回復する際にも出てきます。
下記の動画では野生の草食動物が捕食されそうになっている場面から、運よく命拾いをして回復し、立ち去っていく様子が映し出されています。食べられそうになっているインパラは仮死状態のように生命活動が最小限に抑えられていますが、襲っていたレオパードが去ると、呼吸が次第に大きくなり、身体が震えはじめ、やがて最後は何事もなかったかのように走り去っていきます。回復のプロセスである体の震えにぜひご注目ください。
※インパラが嚙みつかれている場面から始まりますので、刺激に弱い方は視聴をご遠慮いただくか、1:35以降からスキップしてご視聴ください。
<時間経過>
0:00 インパラがレオパードに襲われています
1:35 レオパードがバブーンに追い払われます(インパラの命が助かりました)
2:00 インパラは横たわったままです
2:18 お腹が動いて、呼吸が戻ってきたのがわかります
3:13 体の震えが始まります
3:42 目に生気が戻ってきました
4:06 立ち上がり、元気に走って去っていきました
この動画の状況はある意味で極端な例になりますが、体の震えが生理的なもの、ストレス状態からの回復の過程で自然と出ているということがおわかりいただける思います。動物が「また、いつ敵が来るかわからない…」とビクビクしながら生きていないのは、人間ほど脳が発達していないのと同時に体に備わっている回復機能としての「震え」がきちんと作用して「トラウマ」を体に記録せずに済んでいるからなんですね。
TREは動物が持つ震えのメカニズムを引き出す
人間もこの動物がもつ震えのメカニズムを同じように体に備えています。
それを理性的に抑えてしまっていたり、何らかの理由で放出されずに体に滞ったままになっていることがあるときにお役に立つのがTREです。
本来、震えが出るべき場面で震えが出なかった場合、身体はそのストレス状態を体の内に保ったままになっています。その影響として慢性的な疲労感、痛み、不眠、消化器系の問題などの体調不調やメンタル的な不安定さとして現れることもあります。いわば、過去に囚われた状態が、今ここの身体の不調としてメッセージを伝えてくれているのです。
TREのエクササイズで震え・振動を引き出すことによって、動物がストレス状態から回復するように、人間も健やかな神経系の状態を取り戻すことができるのです。